サクラ大戦RV

 

第1話 虹色の翼 第2幕

 
その頃、はじめはコクピットの中で我に帰っていた。
眼前に無数の魔操機の群れ。武装を調べたら、
陸戦用武器が光刀だけしかない。
「あっちゃー・・・・・制空水平ミサイルだけでどうしろってのよ・・・・・
あたしってかっこわるぅー・・・・・・・」
さっきまで頭の中に語りかていたAIの”AYA”は完全に沈黙している。
「アヤちゃんはおネンネですか・・・・」
魔操機がこちらへ踏み込んで来る。白蓮から「自分達にとって脅威な
モノ」を感じとったようだ。
「こうなりゃ覚悟決めようかな」
はじめは目の前の一機に照準を合わせて、白蓮の光刀を振り下ろした。
魔操機は袈裟がけに二つに割れて爆発した。
「次!」ついで、白蓮は振り向いて後ろから襲いかかろうとした一機の
胴に一閃した。

「は、速い!なんて反応速度なの!」
今さらながら、はじめは白蓮の性能に驚愕した。
パイロットの反応、いやそれ以上の俊敏な対応が可能なのだ。
「うーん・・・・しばらくこうしてちまちま攻撃して打開策を練るかぁ・・・・」
白蓮の性能が、はじめを冷静にさせた。
その時、後方から遠距離攻撃型の魔操機が雨のように小型
ミサイルを降らせた。
「わわっ」白蓮は全弾はよけきれずによろめき
はじめはコクピットに顔を打ち付けた。
鼻っ柱につぅーんと激痛が走ったがとっさに、バランサーを使い、
かかとの小型バーニアを使って機体をミサイルの放った魔操機に
向かって滑空してダッシュさせた。
「おまえかぁぁ!!!」
白蓮の光刀が水色の魔操機の胸に突きささった。
たいていの遠距離型がそうであるように、
この魔操機も接近戦に弱かった。
遠距離魔操機は粉々になった。
だが、もう一機の遠距離型が冷笑するようにもっと高台から砲弾を浴びせた。
「・・・・・あたっ・・・・・・・もうー超ムカつくー。」
と、緊張感の無い悪態をついたが、事態は深刻だった。
さっきの砲弾で、左足間接のバランサーが不自由になった。
それにもともと空中戦用の光武は運動性がずばぬけて高くても、
装甲はかなり軽量化されているのだ。
そんなに打たれ強くは無い。
「ここまでなのかな・・・・・まぁいっか、がんばったし・・・・
でも、ただじゃ終わらないよ!」
はじめは操縦桿を倒して、白蓮をダッシュさせ、一機の魔操機の
両肩をわしづかみにし、後ろに押していって、
後方の群れに掴んだ機体もろとも突進した。
「こういう使い方もあるのよね!!水平ミサイル、全弾発射!!」
白蓮の機体から無数のミサイルが発射され、はじめによって強制的に
一列にされた敵陣めがけて飛んで行った。
ドミノ倒しのように、一列の魔操機が誘爆による誘爆で倒された。
「てへへ・・・やった・・・・けどここまでね・・・・」
爆発の至近距離にいた白蓮も限界だった。
コクピットのディスプレイに「セーフモード推薦」
と警告が出ている。ここまでやっても3分の1を倒したに過ぎないのだ。
それほどの大軍である。
桜木町はほとんどさっきまでの外観を留めていなかった。

ちっくしょー、あたしだってねぇ、ホントはどんなにバカに見えても
山下公園を好きな人と歩いたりしたいわけだったのよ。

はじめは、もう一度「長都」を見ようと思ったが、見えなかった。
「・・・・・・・・・」はじめはもうどうでもよくなった。
その時、爆炎が空から降ってきて、はじめの周りの魔操機を
吹き飛ばした。青と緑の機体が、肉眼では追いつけない程の
スピードで旋回し、ミサイルを地上めがけて発射している。
それら全てが精密に敵機に命中し、確実に敵陣を崩して行った。
青い機体が舞い降りて、光刀を引き抜くと、白蓮にとどめを刺そうとした
魔操機を刺し貫いた。次に緑の機体が、後方の魔操機を掃射しながら
着陸して来た。

「おい、生きてるか、バカ!」
桜田の顔と声が、白蓮のコクピットの通信ディスプレイに表示された。
「・・・・・・そおいう便利な武器があるなら早く来てよねー・・・・」
はじめは疲れた顔で負けじと言い返した。
「ぐあーかわいくねー!!なんだよ助けてやったのにその言い草!
ありがとうの一言くらい言えー!」
画像の向こうの桜田が暴れている。
「そっちこそ会って間もないのにバカ呼ばわりしないでよ!」
「あーバカをバカと呼んで何が悪いんだよバカ!対地攻撃武装の無い
飛行型光武なんか、赤子同然なんだぞ!それをろくに調べもしないで
出撃して、かっこわるー」
「うぅぅ・・・・」
「まぁまぁ二人ともー。敵も全滅したし、痴話ゲンカはそれくらいにしたら」
友之が火に油を注いだ。
「これのどこが痴話ゲンカだ!!」二人がハモった。

「それより朝日奈さん、早くコクピットから出た方がいいよ。
いきなり使うと、それはかなり危険な機体なんだ」
友之が真剣に言った。
「え?どういうこと・・・・・」
はじめは友之の真剣な表情に押されて、
ハッチを開けて降りた。

降りて大地に立った瞬間、世界が曲がっていた。
はじめは泥のような眠気に誘われて、その場に
倒れ込んだ。
桜田の声が聞こえたような気がした。
桜田の為に誰が起きてやるもんか。
薄れゆく意識の中で、はじめはまだ憎まれ口を叩いていた。

続きを読む

インデックスに戻る

トップページへ戻る