サクラ大戦RV 第二話 「カロリー・オフ」 第四幕

 


 

「熊三!いつ戻ったんだ!」
「みんな〜久しぶりッ!」
大船撮影所に戻った熊三を、スタッフが口々に温かく出迎えた。
そんな雰囲気から、はじめは最初に感じた印象通り、彼が独特の親しみやすさを持った人物であることを改めて感じた。
「ご苦労でしたね、熊三君」
柳田司令が玄関まで迎えに来ていた。
「よーおっちゃん!俺が来たからには安心していいぜ!」
まるで親戚に挨拶でもするように、熊三が声をかける。
「で、つまらねえもんだけどよ、みんなに中国みやげでXO醤と、季節じゃねえけどワガママ言って月餅を買って来たからみんなで食ってくれ」
「XO醤か。いい料理ができそうだ。感謝するぞ、熊三」
ユーリがいつになく上機嫌である。
(ふーん、ユーリと熊三君て本当に仲がいいんだなぁ)
はじめはユーリの知らない一面を見て少し驚いていた。
一見、異質な取り合わせだが、熊三の明るさの前ではユーリの冷酷さも楽にほぐれるのかもしれない。
「きゃはっあたし月餅だいすき!ありがとー熊三君!」
「熊三君、つかれたでしょ。みんなでお茶にしましょうね」
月餅のおかげでぼたんやかなえにも大モテである。
「これで、帝国華撃団宇宙組メンバーが全員揃ったってことッスね」
倉田が興味深げにメガネに手をやった。
「そうなの?」
ほっとしたような、まだ気が抜けないような気持ちではじめが倉田を見た。
「おやおや朝日奈さん、聞きたいことが山ほどありそうって顔っすね!情報通の僕がなんでもお答えしますよ」
「そうねえ…」
確かに今すぐにでも滝のように情報が流れてきそうな倉田をなるべく待たせないようにしながら、はじめは聞きたいことを整理した。
「じゃあ、ユーリと熊三君ってなんであんなに仲がいいの?」
「初期メンバーは熊三君とユーリさんしかいませんでしたからね。一見正反対だけど、いいコンビでしたよ」
「あと、料理って?」
「ああ、ユーリさんは料理が趣味なんですよ。なんかプロ並にウマイっす。舌噛みそうな名前の料理をポンポン作ってくれますよ。そこらへんもなんでも食う熊三君とウマが合うのかもしれませんね」
「…それは楽しみだけど、今は料理とか食べ物とかの話はウンザリだわ…あ!そういえば友之君はまだ研究室なの?」
「ああ、そういえばまだラボが”使用中につき立ち入り厳禁・火気厳禁”になってったっすねえ…」
(火気厳禁ってなんだ!?)はじめは不安になった。この燃費の悪い上にヨメに行けなさそうな恥ずかしい体質をなんとか早く治してもらわなければ。
「隊長さん!そういやぁ友之はどこだい?せっかく久しぶりに帰ったってのに水くせえなぁ」
「ああ、私のせいなの。私の光武のコクピットの調整がうまく行ってなくて、私が大食い体質になっちゃったから…研究室にこもってるのよ」
「なんだー、隊長さんの大食いは一時的なもんか。せっかく仲間が出来たと思ったのによ」
「…とにかく、友之君に一緒に会いに行きましょうか。私も用事あるし」
「……やめた方がいいっすよ…研究室に行くなんて」
倉田が遠い目をした。
「なんでなんで?久しぶりに熊三君に会えるんなら喜ぶでしょう?」
「やはりはじめちゃんは勇気があるね」
「流石は中尉…ご武運を」
神崎もユーリも思い出したくないものでもあるかのようにうつむいている。
「何よみんなして…意外と冷たいのね。いいわ、桜田君、研究室まで案内して」
「うげ…なんで俺が」
「うげって何よ」
友之と仲の良さそうな桜田にしてこの表情である。しかし、ここまでみんなが敬遠するのなら逆になんとしてでも行きたくなって来た。
「桜田君、君が一番、研究室への接近の仕方は慣れてるだろう。きちんとエスコートしてあげなよ」
神崎がこれだけは君に譲るよ、と目で訴えている。
「さっきから何うだうだ言ってんだよ〜俺も研究室ってワケわかんねーから行ったことねえんだ、早く行こうぜ」
熊三も疑いを知らない満面の笑顔を浮かべている。
「ああもう…わかったよ。二人とも知らねーからな」
桜田は観念したような顔で、二人を引き連れて研究室に向かった。


 

研究室は地下三階にあった。
扉はいかにも頑丈そうで、無機質である。
倉田の行った通り、扉のディスプレイに「使用中につき立ち入り厳禁・火気厳禁」
と表示されている。
桜田は扉の前まで着くと、扉の横の壁にぴったりと背をつけた。
「いいか二人とも、俺のように横の壁に貼りつくんだ」
「は?」
「扉の正面に立つのは自殺行為だ!」
「おお〜なんかおもしろそう!俺、なんだかワクワクして来た」
熊三は嬉しそうに壁に貼りついた。
「そ、そう…じゃあそうするわ」
特殊部隊の突入作戦じゃないんだから…と思いながらもはじめもそれに従った。
桜田は緊張した面持ちでインターホンのタッチパネルを押すと、慎重に声を出した。
「…友之、入るぞ。オマエに会いたいって奴が二人来てる」
「…………」
「反応がないわね…」
「一番ヤバイ状態かもしれねー…」
桜田が諦めの境地に入っている。
「ヤバイって何が?まさか、友之君の身に何か??」
はじめは桜田が言ったことを忘れて、扉の前に立って扉を激しくノックした。
「友之君、そこにいるんでしょう?返事をして!大丈夫なの!?」
「あっバカ!奴を刺激するな!」
「帝国華撃団員:声紋照合しました」という表示がディスプレイに出て、扉のロックが解除された。はじめは桜田の制止を振り切って思いっきり扉を開け…
ドゴォォォォォン。
(朝日奈はじめ…バカな奴だったぜ…ありがとうそしてさようなら!!彼女の次回作にご期待ください!)
爆音が轟く中、桜田は祈った。


「ケホッ……友之君、どこ?」いきなり視界が真っ白になって爆風に覆われたことをおぼろ気に意識しながら、はじめは友之を探した。
無造作に積まれた機械と書類と、床に無数に這うコードの先に、白衣を着た友之の小さな背中が見えた。
「ダメだよ〜慎重にドアは開けないと、危険物が沢山置いてあるんだから」
キーボードを猛烈な勢いで叩きながら、友之は何事もなかったかのようにディスプレイを見つめたまま言った。
「あの…友之君」
「なに?」
「大丈夫なの?返事が無いから私、心配になって…」
「僕なら全然平気だよ〜むしろ至福の時間なんだ…って僕、誰と喋ってるんだろう…ウチに女性はいるけど女性スタッフでここに来た人いたっけ?空耳かなぁ〜それとも女神様かなあ…発明と爆発の女神様だったらいいなぁ…僕いよいよヤバイかも」
友之はブツブツ言いながらも光武の設計プログラムらしき画面に次々と何か複雑なコードを打ち込んでいる。その鬼気迫る雰囲気に、はじめは完全に置いていかれた状態になってしまった。
「……おぉ、生きておったのかはじめ」
「すげえな、流石は隊長だ」
男二人がコソコソと顔を出した。
「あんたらねぇ…」全身煤だらけになってしまったはじめが二人を睨んだ。
「…隊長?はじめ?あぁそうかぁ、朝日奈さん?」友之がようやく顔をこちらに向けた。
「あれ、どうしたの、ひどい格好だね」
(……あんたのせいでしょうが…)とはじめはつっこみたかったが、いつもの優しい目に戻っている友之に言うのも気がひけてしまった。
「友之ー、久しぶりだな」
熊三がまだ用心しながら語りかけた。
「熊三君!?やっと帰って来たんだね。君の"赤雷"は整備しといたのに、なかなか帰って来ないから心配してたよ」
「マジ?俺の機体整備できてんのかー、流石は友之だな」
「当たり前じゃないか。接近戦仕様のナックルを強化した燃える機体だからね」
「…コホン、盛り上がってる所悪いんだけど、私の体質って治るの?」
…今のままでもいいじゃない、とか友之が言い出しそうな気がしてはじめは不安になった。
「ホントに治しちゃっていいの?食べても太らずオハダがキレイになるなんて、僕はなんだか凄く商売になりそうな発明しちゃったと思いはじめた所なんだけど…」
「よくないっ!!」
はじめは全面否定した。
「冗談だよ〜。こんなこともあろうかと、ちゃんと治療薬をさっき完成させた所なんだ。その名も"ミラクルまんぷ君"!!」
友之が怪しげな色のカプセルが入った瓶をどこからともなく取り出した。
「いかにもその場かぎりってネーミングだな…」
「マニアックなツッコミはよしなよ桜田君」
「おまえがマニアックすぎな名前つけるからだろ」
「……とにかく完成したのね。は、早く飲まないとまた…」
そう言い終わるや否や、きゅーっとはじめのお腹が鳴ったので彼女は赤面した。
「うーん、確かに惜しいなぁ〜おもろい体質だ」
「隊長、考えなおさねえか?俺と一緒にフードファイターとして全国まわろうぜ」
桜田と熊三が本当に惜しそうな顔をした。
「そこうるさいッ!と、とにかく、ありがたく飲ませて頂くわ"ミラクルまんぷ君"!」
とりあえずはじめはその怪しいカプセルを一錠口に含んだ。
「即効性を重視して作ったからね、五分もあれば元の体質に戻ると思うよ」
「…ありがとう友之君。もうこれ以上、恥ずかしい思いをしなくて済むのね…」
はじめは友之の才能に心底感謝した。(しかし、誰のせいでこんなことになったのかという思考は感動のあまり欠如していた。)
「…一日三回、食前くらいに飲んでね。瓶のカプセルがなくなったら完全に体内の調整は終わるよ。さて、僕はコクピットまわりの調整をもう少ししたら上に戻るから、みんなは先に戻ってて」
友之は肩の上に乗って来たココの頭を少し撫でると、デスクに向き直った。
「おう、またな友之。お前が来るまで月餅とっとくからな」
熊三はまた鬼才モードに入ってしまった友之に気にもとめず、明るく応対した。

「じゃ、刺激しないようにして戻ろうか。用は済んだだろ」
桜田が小声ではじめと熊三に目くばせした。
どうやら桜田の忠告を聞かないと大変になるということを身を持って知ったので、
二人は黙って頷くと、そっと研究室を後にした。

「…はあ、ひどい目にあったなぁ。早くお風呂に入って洗濯しないと」
煤だらけになった自分の服を見て、はじめはため息をついた。
「…あの爆破を食らってそれだけで済むのは大した能力だと思うけどな」
「いやホント、頼りがいがある隊長でよかったぜ」
桜田と熊三が畏怖の意をこめてはじめを見つめた。
その時、はじめの腕のモバイルキネマトロンに着信が入った。
「中尉、ご無事で何よりです。今から一時間後にブリーフィングがありますので、
時間になりましたら作戦会議室に来てください」
(…ユーリまでがそんなことを…よっぽど恐ろしい部屋なのかしら研究室って)
とはじめは自分の大胆な行動に我ながら感心してしまったが、
「わかったわ。あとの二人にも伝えておくから」
と簡潔に返事をして、通信を切った。
「…一時間後にブリーフィングを行うわ。熊三君、長旅で疲れてない?それまでゆっくり休んでね」
「俺はぜんぜん疲れてねえよ。ま、体を動かさねーと落ち着かない性分だから、じっとしてるのは逆に疲れるけどな」
熊三は鼻をこすった。
「…おまえも相変わらずタフだな〜…」
「そーだ桜田!組み手やろーぜ組み手!真剣相手は緊張できてイイんだよな」
「…まあ好きにやってて。私はシャワーを浴びて着替えて来るわ」
はじめは二人の元気さに半ば呆れながら、自分の部屋に戻った。

「……ふう、今日も色々あったわね。ってまだ何か起こりそうな気もするんだけど…」
はじめは着替えをタンスから取り出して、シャワー室へ向かった。大船撮影所にはシャワー室と大浴場があるが、なんとなくゆっくり風呂につかる気分でもなかった。
脱衣所でのろのろと服を脱ぎ、シャワーの蛇口をひねると、熱いお湯が肩を叩いて気持ちよかった。
(あぁ、このまま眠っちゃいたい)心地よさにうっとりしかけた頃、はじめは何かの気配を感じて戦慄した。
(…誰?)
また何か、あの少女や大男に遭遇した時のどす黒い気だった。しかし、それは一瞬で消えた。
(ただの気のせい…?まあ、こんな状態じゃ何もできないんだけど…)
はじめは不安を振り払おうと、シャンプーで髪を洗った。
…怖い。誰かに…助けて欲しい。
そんな思いが少しよぎった。
…でも、誰に?
はじめの脳裏を高速で隊員達の顔がよぎったが、それを否定するように
彼女は思いっきり頭を振った。
(あーもうなんでなんで?みんな、きっと私のことなんてへっぽこ隊長程度にしか思ってないに決まってる!思えばさんざんな目に合ってるし!特に桜田君なんかあたしのことバカにしてるとしか思えない!!)
はじめは蛇口を止めると、流れる水をじっと見つめた。
(…それにもう…男だとか女だとか…そんな感情…いらないんだから…)
顔が火照っているのは湯気のせいだけだと、はじめは思うことにした。

シャワー室から出ると、なぜか熊三と桜田がいた。
「ん?どうしたの?道場ならもう一コ下のはずだけど」
「あ?え、えーと俺らもちょっと汗かいたからシャワー浴びようと思ってよ」
桜田がどう見てもぎこちない感じで応対した。
「ふーんそう。男性用のシャワー室ならここと反対方向だけど」
「だ、だから今丁度そこに行こうとしてたんだよ、な、なあ熊三」
「そうそう!間違っても体が勝手にシャワー室に行ったりしてねえ!」
「わーっバカバカバカ!」
桜田が慌てて熊三の口をふさいだ。
「は?」
「なんでもねえ!熊三の奴すっかり疲れてるみたいでよ!寝ぼけてんだよしょーがねえなぁ〜」
はじめはいぶかしげに熊三の口を塞いでいる桜田の手をはらいのけると、熊三の顔をじっと見た。
「…熊三君、正直に答えなさい。まさかあんた達…の、ぞ、い、て、たわけ?」
「はい…爆乳大佐」
熊三がポロリと感想をこぼした。
「そう…」
「ひっ…」
はじめの両拳から立ち昇る霊力波を見ながら、二人は戦慄した。
「このデバガメどもが…ッ!そんなに組み手が好きなら二人まとめてお相手するから覚悟しなさいッ!いくわよ!白真無念流裏式!」
「ぎゃあああああああああッごめんなさいごめんなさいッ」
桜田と熊三は真っ白に燃えつきた。

(あーもうっ!一瞬でも乙女ちっくな気持ちになった私がバカだったわ。まったく男なんて超絶にバカでスケベでお子様! もー油断しないんだからッ!)
自戒の念を込めて、はじめはずんずんと廊下を歩いた。
「あ、危ない!」
一階に上がるや否や、スタッフの声が飛び込んで来た。
「え?」
声の上がった方向を見ると、野球ボールが高速で飛んで来た。
(だ、ダメ、間に合わない!)
はじめは観念して目をつぶった。もう、今日は完璧に厄日だ。
そう思った瞬間、はじめの顔の前でパシっと音がした。
おそるおそる目を開けると、大きな手がボールを掴んでいた。
「すんませ〜ん、ちょっと野球してたもんで…大丈夫っすか〜」
撮影スタッフの声が遠くから聞こえて来たので、はじめはなぜボールが飛んで来たのか
うすうす合点が行った。
「まったくしょうがねえ奴らだな。嬢ちゃんの顔に当たったらどうするつもりだ?」
大きくて低い声が飛んで、そのしっかりとした手がボールを確実にスタッフの方へ
投げ返した。
「大丈夫か、嬢ちゃん」
声の方を見上げると、がっしりとした体格の渋そうな男性が立っていた。帝国陸軍の軍服を来ている。
「は…はい…」
「そうか。ま、かなり手こずってるみてえだが、そのうちみんな犬ッコロみてえにかわいく見えて来ると思うぜ」
「え?あ、あなたは…?」
その全てを見透かされているような瞳と、頼もしそうな姿に、はじめはすっかり赤面した。
男性ははじめの頭をポンと軽く叩くと、
「頑張るのもいいが、ほどほどにな。女はもっとラクをするもんだ」
と優しげな瞳をチカっとさせた。
「…は、はい!ありがとうございます」
はじめは胸が高鳴った。こんなに優しく扱われたのは実に久しぶりのような気がした。
「じゃあな嬢ちゃん。また会えると思うぜ」
男性は司令室の方へ向かって行った。
(はあ…厄日かと思ったけどそうでもなかった…ど、どうしよう…あの人…誰なのかな)
まだ高鳴る胸をごまかすように、はじめが部屋に戻ろうと方向を変えると、またしても桜田が立っていた。
「は〜変わり身の早いことで…」
「うぐっ…さ、桜田君、いつからそこに!?」
「"は、はいありがとうございます!"だって!いや〜あのおっさんにさっき俺らが見た修羅の姿を見せたかったぜ」
桜田が先程のウルウルとしたはじめの表情をマネしてからかった。
「んもぅっ超絶ムカつくッ!体の覗きに飽きたらず今度は心の覗きッ??このドスケベまっしぐら男!」
「うっうるせーな!俺はただ熊三につきあっただけでお前のクソつまらん立派な……いやいやとにかく誰がお前なんか!!」
支離滅裂な言動に整理がつかず、桜田の耳のあたりが真っ赤になった。逆ギレもいいところである。
「…やっぱりアンタとはいずれ決着をつけなきゃならないようね」
「望むところだこのガチガチのカタブツ軍人!」
「はぁいはいはい、はじめちゃんに向かってガチガチとは何にも知らないんだね桜田君」
神崎が今にも噛みつきあいそうな二人を軽く引き離すように割って入った。
「もう!誤解を招きそうなことを言わないでよ神崎君!」
「おめーはすっこんでろシモネタ大王!」
「まったく…何やってるんですか中尉まで一緒になって」
「…ユーリ、男のあなたからしっっっっっかり注意してよね、女性シャワー室を覗かないようにってね」
「…………桜田、そんなに幼稚だったのか」そう言いながらユーリはちょっと赤面した。
「こりゃオドロキだ。うらやましいけど、そんな手段でしか見られないなんて、まだまだだね」
「な、なんで俺ばっかり!言っておくが熊三だって共犯だぞ!」
「熊三は今まで少林寺で過酷な禁欲生活を送ってたんだ、大目に見てやれ」
「ちょっと!あんまり熊三君のこと甘やかすのよくないんじゃないの??」
「そうだぞユーリ!アイツ留学一日目にしてバレバレのアドレスで”エロ画像希望します"ってメール全員に送って来ただろうが!」
「その件に関しては俺が山ほどテロ画像を送っておいてやったのであいつも懲りたろう」
「い、意外とベタなんだな…さすがは寒い国出身だ」
「……貴様に言われる筋合いはない」
「ふあ〜いい湯だったなぁ〜アレ、何してんだ、みんな揃って」
熊三が呑気に洗面器を脇に抱えて登場した。
「はぁ〜もう…とにかく…お風呂くらいゆっくり入らせてよね」
呑気そうな熊三の顔を見たら、すっかりはじめは怒る気を無くして、
ふらふらと自室へ向かった。
「?どうしたんだ隊長?」
熊三が桜田にコメントを求めたが、
「いや…俺にもよくわかんねー」
と桜田は首をひねるばかりだった。
「ははは、君達には女性の心はまだまだわからないようだね」
神崎が高らかに笑った。
「よっく言うぜ。同じ相手と三ヶ月以上続かないくせに」
「うぐっ…突っ込みが上手くなったじゃないか桜田君」
(…まったくドイツもコイツも一緒のレベルだってーの!)
小耳にはさみながらはじめは一人毒ついた。


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